Battlefield 6(BF6)では、ゲームの公平性を守るために新たにカーネルレベルのアンチチート「Javelin」が採用されています。その仕様は高度ですが、プレイヤーにとってはシステムへの影響や互換性の問題も無視できません。
本記事では「BF6 アンチチート 仕様 カーネル レベルとは?」をテーマに、仕組みから効果、注意点まで詳しく解説します。
BF6 アンチチート Javelinの基本構造

BF6に導入された「Javelin」は、EAが自社開発したカーネルレベルで動作するアンチチートシステムです。通常のアンチチートは「ユーザーモード」と呼ばれる一般アプリケーションの層で動作しますが、チート開発者は年々進化し、より低レイヤー(カーネル層)に入り込んでゲームの挙動を改ざんする手口を使うようになりました。
そこでEAは、従来の方式では太刀打ちできない領域にまで監視機能を拡張したのです。
1. カーネルレベルとは何か?
カーネルは、OSの中心部に位置し、CPU・メモリ・デバイスアクセスなどを直接管理する領域です。ここに入り込むチートは「ドライバ型チート」と呼ばれ、従来のアンチチートソフトでは検知困難でした。
Javelinはこの層に常駐することで、アプリケーションの外側からシステム挙動を監視し、ドライバレベルでの不正改ざんやメモリ操作を検出できるようになっています。
2. Javelinの監視対象
Javelinは次のような動作を監視しています。
- プロセス監視:外部プログラムがBF6のプロセスに不正アクセスしていないかを確認
- メモリ改ざん検出:ゲーム内数値(HP、弾薬数など)を不正に書き換える挙動を監視
- ドライバ検証:署名のない不正ドライバや隠れたカーネルモジュールを検出
- デバッグ阻止:ゲームを強制的に解析・改造しようとするデバッガーをブロック
これらをカーネルレベルで制御するため、従来型アンチチートに比べて検出精度が飛躍的に向上しています。
3. 他のアンチチートとの違い
たとえばRiot Gamesの「Vanguard」やUbisoftの「BattlEye」などもカーネルレベルで動作しますが、JavelinはBFシリーズ専用に最適化されている点が特徴です。EAによると、ゲームエンジン「Frostbite」と密接に連携することで、リアルタイムでの挙動監視や高速なチート遮断を可能にしています。
そのため、システム資源への負荷を抑えつつ強固な監視を実現しているとされています。
4. 導入の歴史と実績
Javelinは2022年に『Battlefield 2042』でテスト導入され、現在までに33億台以上のPCで稼働、累計3,300万件以上の不正試行を阻止したと公式発表されています。
これらの実績を受けて、BF6ではベータ版の段階から正式採用され、発売時点でのチート対策体制を強化しています。
なぜBF6でカーネルレベルアンチチートが選ばれたのか?効果と採用背景

1. チートの巧妙化と従来方式の限界
近年、PCゲームのチートは「外部プログラムを注入するだけ」ではなく、ドライバレベルでOSに潜り込み、通常のセキュリティでは検知できない方法が主流となっています。代表的なのは「エイムボット」や「ウォールハック」をシステムコールの段階で仕込む手法で、ユーザーモードのアンチチートでは発見困難でした。
従来型では「怪しい挙動を検出してBANする」までに時間がかかり、その間にゲーム体験が損なわれる問題がありました。EAはこれを解消するために、より強力なカーネルレベル監視に踏み切ったのです。
2. シリーズ特有の事情:大規模マルチプレイ
Battlefieldシリーズは「128人対戦」など超大規模なマルチプレイが売りであり、一部のチーターがいるだけで数十人単位のプレイヤー体験を破壊するリスクがあります。例えば一人のウォールハック使用者が戦況を左右してしまえば、コミュニティの信頼は一気に崩壊します。
EAはBF2042のリリース時にチート対策が不十分で強い批判を受けた経緯があり、その反省からBF6では「最初から万全の体制で臨む」姿勢を示しました。
3. Javelinの効果と実績
EAが公表したデータによると、Javelinは導入から数年で33億台以上のPCに展開され、3,300万件以上の不正試行をブロックしました。検出精度は99%以上とされ、特に「カーネルレベルドライバを利用した不可視型チート」に対して高い効果を発揮したといいます。
これにより、EAは「過去最大規模のアンチチート成功例」としてJavelinをアピールし、BF6での採用を正当化しています。
4. 業界全体の流れと競合タイトルの存在
EAだけでなく、Riot Games(ValorantのVanguard)やUbisoft(BattlEye)など、他社も同様にカーネルレベルアンチチートを採用しています。特にValorantはローンチ時からVanguardを導入し、「侵入的すぎる」と批判を受けながらもチート発生率の低さで成功を収めました。
EAはこの流れを無視できず、BF6の競合であるCoDシリーズなどと差別化するためにも、最新技術の導入を選択したと考えられます。
5. プレイヤー保護とコミュニティ維持
チート対策は単なる技術問題ではなく、コミュニティの寿命を左右する要素です。過去作で「チーターが多すぎてやめた」という声が広がった結果、プレイヤー人口が急落した事例もあります。
EAはこの失敗を繰り返さないために、BF6で「本気でチートを排除する」というメッセージを明確に出しました。公式インタビューでも「チート対策はゲームの根幹に直結する」と強調しており、Javelin採用はその意思表明とも言えます。
BF6 アンチチート ユーザーへの影響と注意点

1. システム要件の厳格化
BF6でJavelinを利用するには、Secure BootとTPM 2.0が必須条件となっています。これは、ハードウェアレベルでのセキュリティを保証する仕組みですが、古いマザーボードや自作PC環境では未対応の場合もあります。そのため、
- Windows 10以前の古いOS
- TPM非搭載のマザーボード
- Secure Bootを無効化しているマシン
ではゲームが起動しない可能性があります。特に自作PCユーザーやカスタムBIOSを利用している人は要注意です。
2. Steam DeckやLinux環境での非対応
Javelinはカーネルレベルで動作するため、Windows以外の環境ではサポートが困難です。EA公式もSteam Deck非対応を明言しており、Linux + Proton環境でも起動は不可能とされています。
これは「Secure Bootをエミュレートできない」ことが主な理由です。結果として、BF6はPC版でありながらWindows専用タイトルとなっています。
3. パフォーマンスへの影響
Javelinは常時カーネル層で監視を行うため、CPUやメモリに一定の負荷がかかります。EAは「最適化されており、通常プレイでパフォーマンス低下はほぼ無い」としていますが、ユーザー報告では以下のようなケースもあります。
- 高負荷時にフレームレートが不安定になる
- セキュリティソフトやドライバとの競合でブルースクリーンが発生
- 起動時間がやや長くなる
特に古いハード構成では顕著に影響を受ける場合があるため、安定性を重視するユーザーは注意が必要です。
4. プライバシーとセキュリティへの懸念
カーネルレベルで常駐するソフトは、理論的にはシステム全体へのアクセス権限を持ちます。そのため一部のユーザーからは「事実上ルートキットと同じ」「個人情報を監視されるのでは」と懸念の声もあります。
EAは「ゲーム以外のデータを収集することはない」と説明していますが、プライバシーに敏感な層にとっては大きな不安要素です。
5. 他ソフトとの競合
カーネルレベルのアンチチートは、同じ階層で稼働する他のアンチチートやセキュリティソフトと衝突する可能性があります。実際に、BF6オープンベータではValorantの「Vanguard」と競合し、両方がインストールされている環境でBF6が起動できない不具合が発生しました。
また、一部のウイルス対策ソフトやハードウェア監視ツール(例:MSI Afterburner)と相性が悪いケースも報告されており、ゲーマーは使用するツールの組み合わせに注意する必要があります。
6. 誤検知のリスク
カーネルレベルのアンチチートは強力であるがゆえに、チートではないプログラムを誤って遮断するリスクも存在します。例えば:
- 配信ソフト(OBS、XSplit)との干渉
- マクロ付きゲーミングデバイスの制御ソフト
- チューニング用ユーティリティ
これらが「不正行為の可能性あり」と判定されるケースがあり、最悪の場合、アカウント停止につながる恐れもあります。
7. ユーザーが取るべき対策
ユーザーが安全にBF6をプレイするために取るべき注意点は以下の通りです。
- BIOS設定を確認:Secure BootとTPMを有効化しておく
- 不要なバックグラウンドソフトを終了:特にチューニング系やマクロ系ツール
- セキュリティソフトを最新に更新:競合を最小化するため
- トラブル時は公式サポートに報告:誤BANやクラッシュは自己解決せず、公式対応を仰ぐ
他ゲームとの競合:ValorantのVanguardとの衝突事例
1. 現象の概要:エラー表示と競合の発生
Battlefield 6(BF6)のオープンβプレイヤーの間で、「ValorantがインストールされているとBF6が起動しない」「Valorantをアンインストールしろ」という警告が表示されるケースが多数報告されました。
表示されるエラーメッセージには、「一般的なソフトウェアの非互換性」「競合するソフトウェアをアンインストールせよ」などといった文言が含まれています。
2. 技術的背景:カーネルレベルの抗争
この問題の根本原因は、BF6が採用するEAのカーネルレベルアンチチート「Javelin」と、Valorantの「Vanguard」が、同じ低レベル・カーネル層に侵入し、同一領域へのアクセスを巡って競合してしまうことにあります。両者ともにOSの深部に入り込み、「メモリ管理」や「防御領域の確保」を試みるため、同時に動作させると互いに干渉してしまうのです。
Riot Gamesのアンチチート責任者、Phillip Koskinas氏は、「両者は互換性がある。ただし、BF6はValorantクライアントの同時実行を許可していない」と公式に明言しています。つまり、Valorantをアンインストールする必要まではないが、「同時に実行しないこと」が現状の対応策です。
3. 実際のユーザー体験と反応
Redditのスレッド(r/Battlefield)では多数のユーザーがこの問題について言及し、ユーモアと憤りを交えた反応を見せています。一部のやりとりを以下に引用します:
“Battlefield 6 just told me to uninstall Valorant. Literally.”
(「BF6に“Valorantをアンインストールせよ”って言われたんだよ。マジで。」)
“They’re mating and producing anti‑cheat babies behind scenes.”
(「裏でアンチチート同士が繋がっておかしなことになってる。」)
こうしたユーザーの声には、「アンチチート同士が衝突して困る」「どうやって解決するのか?」といったリアルな困惑が感じられます。
4. 公式・開発側の対応姿勢
EAのアンチチート部門ディレクター、AC Ward氏も混乱したエラーメッセージについて、自ら「誇張されている」と認めており、「Valorantの同時実行を避ければ問題ない」という認識であることを表明しています。
BF6の開発チームとしては、この問題が発売までに修正されるかを検討中とされています。BF6完全リリース前にこの互換性問題の改善に期待がかかります。
5. 競合問題が示す業界の課題
この事例は、カーネルレベルのアンチチートが主流化する中、各社の開発した安全システムが互いに干渉しやすい構造的課題を抱えていることを浮き彫りにしています。
BF6のJavelinだけでなく、ValorantのVanguard、他のFPSに採用されるEasy Anti-Cheat(EAC)やBattlEyeなども全てkernelで稼働するため、同一環境に複数のゲームをインストールしているユーザーは将来も似たようなトラブルに直面する可能性があります。
まとめ(詳細項目)
項目 | 内容 |
---|---|
問題現象 | BF6がValorantと同時起動不可エラーを表示 |
技術的原因 | JavelinとVanguardがカーネルレベルで競合するため |
公式見解 | 同時実行しなければ互換性あり(アンインストール不要) |
ユーザー反応 | RedditやSNSで困惑とユーモアを交えた反応多数 |
開発対応 | エラーメッセージの修正や互換性改善を検討中 |
業界的課題 | カーネルレベルアンチチートの普及による互換性問題の顕在化 |